ANAが協賛するロボットの決勝戦とは?!ロサンゼルスまで行ってみた!

2023 / 03 / 15
イノベーション・宇宙

アメリカ・カリフォルニア州にあるロングビーチ・アリーナにて、XPRIZE財団が運営し、アバターロボットの開発を競う「ANA AVATAR XPRIZE」の決勝戦が、2022年11月4日〜5日(現地時刻)に開催されました。

XPRIZE財団は1995年に設立された非営利組織で、2004年から様々なジャンルの技術コンペを開催している。たとえば、2021年からスタートし現在も進行中の「XPRIZE Carbon Removal 」は、イーロン・マスクがスポンサーとなり、大気中や海中などから二酸化炭素を回収する技術を競うコンテストを開催中です。

「ANA AVATAR XPRIZE」では、全日本空輸(ANA)がスポンサーとなり、テーマを「AVATARを使い地理的・時間的・経済的距離を縮めて世界をつなぎ人類の様々な課題を解決」として2018年にスタート。賞金総額は1,000万ドルで、優勝チームは500万ドルが獲得できる大きなコンテストです。2022年の決勝戦では、世界10ヵ国17チームが決勝戦に参加しました。

世界10ヵ国17チームが決勝戦に参加

人類の歴史をみても、パンデミックや災害などでピタッと移動できなくなってしまうケースが何度もありました。そこで、「人が肉体で移動できないときもある」との考えで、人の意識を伝送できるような、持続可能なモビリティーについてavatarinでは取り組んでいます。

「ANA AVATAR XPRIZE」の運営に参画した、avatarinの代表取締役CEO 深堀昂氏は「2016年の10億人の生活を変えるテクノロジーコンセプトを6ヶ月間で提案するXPRIZE主催の国際コンペに参加し、グランプリを勝ち取ったところから始まり、この賞金レースを通じて世界中で同じような開発が進み底上げができるのはないか、期待に応えられるようなサービスとして提供できるのではないか」という思いを持って、スポンサーとして参加したと話しています。

コンテストは2018年から4年間の間に予選が行われており、今回の決勝戦には10ヵ国17チームが参加しています。ちなみにXPRIZEの決勝戦が公開イベントとして開催されるのは2004年の有人弾道宇宙旅行を競うAnsari XPRIZE以来18年ぶり。会場となったロングビーチ・アリーナには、決勝戦の舞台として宇宙空間を想定したコースを設置。コースは有人カウンターの係員から今回のミッションを聞いて復唱することから始まり、レバーを上げてゲートを上げる→ゲートを通過し安定して走行→ボトル状のバッテリーを掴んで穴にセットする→障害物の岩を避けつつ移動→電動ドリルを使用して壁のナットを回して扉を外す→カーテンで目隠しされた扉の奥から石をつかみ取る→ゴールゲートを通過、という順番です。

会場にセットされたコースの全景

コースの内容は1ヵ月前に参加チームに通達されており、決勝戦に集まった17チームがそれぞれ製作したアバターで、各チーム2回コースにチャレンジしタイムを計測。チャレンジの制限時間は25分で、各ミッションの達成度もポイントに加算されるものの、優勝には完走が条件となっています。

さらに今回のレースのポイントとして、アバターの操作を参加チームのメンバーが行うのではなく、XPRIZE財団の審査員が直前にチームから45分のレクチャーを受け操作するのがレギュレーションとなっています。実はここがポイントで、どれだけ高性能・高機能のアバターを製作しても、開発者以外がそれをすぐに使いこなせるシステムになっていないと、レースを完走することはできません。

深堀氏は、イベント会場にて「汎用性があって感覚的にそれが使えるというのは、アバターの重要なポイント」と話しており、今回チーム外の人が操作するという要素を運営側に導入をお願いしたとのことです。

どんなに多機能で高性能であっても、それを初めて使う人がスムーズに操作できなければ、持続可能なモビリティーにはならないというわけです。

優勝したドイツチーム「NimbRo」のアバターは圧勝ともいえるスピードで課題をクリアし、1回目、2回目ともに10分以内で完走しています。レース後に「NimbRo」を操作した審査員にインタビューしたところ「自分の腕のように操作できた。特に腕をどの辺に動かすか視線で確認しながらでき、そのズレがほとんどなかった」と話していました。操作性の良さが勝利のポイントとなっていたようです。

優勝したドイツチーム「NimbRo」
授賞式の様子

ハードウェアやソフトウェア、そしてサービスを開発する場合、得てして性能や機能にポイントがおかれた開発者目線になりがちですが、様々な人が初めて体験するようなケースでは、性能や機能だけでなく「使いやすさ」がユーザー体験の重要なポイントとなってきます。「ANA AVATAR XPRIZE」は「人が使うサービス」を提供するANAらしさが表れた技術コンペティションとなっていました。

深堀氏は「avatarinではアバター技術に関するコア技術を開発しています。今回のコンペティションを通じて、ハードウェアを作っている人たちにコア技術を提供することによって、ANAグループのシステムを使い、お客さまがアバターを持っていなくても、アバターを使ったサービスを利用できるようにしていきたい」と今回のコンペティションで大きな収穫があったことを話していました。

左から、avatarin株式会社 代表取締役CEO 深堀 昂氏、ANA取締役 常務執行役員 宮川 純一郎氏、avatarin株式会社 取締役COO 梶谷 ケビン氏