ANAグループの翼を支える仕事に迫る!
安全性と飛行効率を追求する
フライトルート作成の裏側
ANAグループは現在、国内線・国際線あわせて1日に約850便運航しています。航空機が毎日、世界中の空を安全かつ効率的に飛行するために欠かせないのが、フライトルートの策定と緻密な管理です。その過程では、上空を通過するすべての国の規則を遵守することはもちろん、変化の激しい気象状況や地形条件など、多角的な視点での検証が不可欠となります。
安全運航に欠かせない、フライトルート策定に携わる社員にお話を聞きました。
~空の道をデザインする3つの専門チーム~
航空機の通る道、“フライトルート”の策定・管理は、多岐にわたる専門知識を必要とします。この重要な任務を担うのが、ANAオペレーションサポート室 フライトオペレーション推進部 (以下、FO推進部)の「航路チーム」「性能技術チーム」「運用技術チーム」の3チーム。彼らの連携と高度な専門性が、ANAグループの安全な空の基盤を築いています。早速各チームの主な業務をのぞいてみましょう!
1. 航路チーム

(左から)ニュートンさん・北島さん
航路チームは、世界中の空域における飛行方式や管制機関との通信方式、空港の離着陸手順などのルールをRoute Manualというマニュアルに反映し、運航乗務員が業務で使用するタブレット端末のアプリに配信しています。カーナビの地図情報のようなもので、最新航空路データが入った航法データベースを航空機に搭載する業務もあります。これらの業務を通じて、フライトに不可欠な情報網を支え、定期便はもちろん、チャーター便や新規就航路線のフライトルート策定にも取り組んでいます。未知の空域へ飛び立つ際も、各国の飛行制限や方式を入念にチェックすることで、安全かつ効率的な「空の道」をデザインしています。
2. 性能技術チーム

(左から)藤巻さん・山口さん
性能技術チームは、あらゆる天候時の性能計算、運航に必要な燃料配分など、運航乗務員や運航管理者(フライトプランの作成、フライトのサポートを行う担当者)が日々参照する情報をマニュアルとして管理・集約しています。各空港で異なる滑走路の長さに対して、飛行機の重量や風向きなどを考慮し安全に離着陸できる速度の計算をはじめ、様々なデータで性能を検証しています。
また、フライトプラン作成システムの運用やマニュアルの最新化といったデータ基盤の維持・管理にも注力しています。さらに、離着陸の安全に直結する機体の総重量や重心バランスの管理も重要な業務の一つ。お客様の手荷物や座席配置、搭載貨物などを網羅した計算環境やシステムの整備を行っています。
3. 運用技術チーム

(左より)岡さん、岡本さん、松藤さん
吉田さん、菊池さん(運航乗務員)
運用技術チームは、運航乗務員の操縦に関連する技術情報を担当しており、それらをマニュアルでわかりやすく説明したり、世界中の最新情報を取り入れたりすることで、運航乗務員が迷わず安全にフライトできる環境を支える専門家集団です。各機種毎に分けられた専任グループには運航乗務員も在籍しており、現場の視点を活かしたマニュアルを作成しています。航空機の安全な飛行について各機体メーカーと議論したり、国際会議などで世界基準の動向を先取りすることで、技術と運用の両輪でANAグループの日々の運航を守り続けています。

チームを越えた連携で、知見を集結
~フライトルート作成の裏側を聞いてみました~
【Case 1:新ルートの複雑性—ミラノ路線】
2024年12月に新規就航したイタリア・ミラノ線。脈々と連なる山岳地帯など、フライトルートを考える上でポイントがたくさんあります。

中川さん:
性能技術チームの役割は、有事の際にも安全な飛行継続および近隣空港への着陸ができるよう、機体重量や山岳等の周辺地形を踏まえた検証を行うことです。
ミラノ線の復路(ミラノ発)では、アルプス山脈が空港周辺にそびえ立つため、
長距離飛行のための大量の燃料で機体が重い状態でも安全な高度で飛行できる経路の検証とマニュアル作成が重要な課題でした。そこで、FO推進部所属の運航乗務員と議論を重ねながら、万が一の際にも安全を確保できることを意識したわかりやすいマニュアルを作成しました。様々なプロフェッショナルと協力して新ルートを作り上げる過程は大変ながらも、大きなやりがいがあり、ワクワクできました。


松藤さん:
運用技術チームでは、新しいフライトルートを検討する際、どのような環境においても万全の安全性を確保できるよう徹底的に検証しています。中川さんの話にもあるように、ミラノ線の大きな特徴は、アルプスを含む山岳地帯です。飛行機が巡航する「高度3万フィート付近の環境x山脈」について様々なシナリオを想定し検証を行いました。
【Case 2:最新情報に基づいたルート変更—ロシア・ウクライナ情勢】
日々運航しているフライトルートでも、突発的な事象に迅速に対応しています。
2022年に緊迫化したロシア・ウクライナ情勢によるルート変更では、臨機応変かつ迅速な対応が求められました。現在に至るまで、周辺諸国の最新情報を踏まえて、最適ルートを調整し続けるなど、いかなる状況下でも安全な運航を維持する体制を構築しています。
北島さん:
ロシアを迂回するため、中国上空を飛ぶ欧州線が増えています。実は、中国上空を通過する便は、中国の空域に出入りする地点が限定されており、混雑する一因となっていました。そのような中、昨年に中国の空域に出入り可能な地点を中国当局が追加する動きがあり、これを活用したルートを作り上げました。この新しい地点が高い山脈の近くであったため、性能技術チーム・運用技術チームと連携し、天候の変化や混雑状況に応じて柔軟なルート選択を行える体制を整えました。日本と欧州間のヒト・モノの移動や経済的繋がりの維持に貢献できていることにやりがいを感じます。

【Case 3:混雑緩和への対策—欧州路線】


ニュートンさん:
観光ハイシーズンとなる欧州の夏は、世界中からのフライトの大幅な増加に加えて、雷など突発的な悪天候も重なり、上空が混雑しやすい時期となっています。これにより、空港での離陸時間の指定による遅延が連鎖的に発生する課題を抱えていました。そのため、混雑空域を迂回する新しいルート(アルプス山脈を越えるルート、イタリア半島上空を飛びアドリア海を横断するルート)を導入して遅延を緩和し、定時出発率の向上を実現しました。ルート検証項目は多岐にわたり大変でしたが、欧州の空港支店から感謝のフィードバックをいただいたときに、自身の業務にやりがいを感じました。



藤巻さん:
欧州発日本行のルートは、ミラノ線と同じく離陸直後にアルプス山脈を越えることが特徴です。離陸直後は長距離飛行に必要な大量の燃料を搭載しており機体が重いため、高い山脈周辺を安全に飛行するルートの作成には多くの制約が伴います。初期の検討段階から航路チームと密に連携したことで、検証からマニュアル作成までをスムーズに進め、パリ、フランクフルト、ブリュッセルをはじめとする複数路線に適用可能な、効率性と安全性を両立したルートを設定できました。

サポート役 山口さん:
実際に、2025年6月に出張でフランクフルト発羽田行の便を利用した際は、新設したばかりのルートが使用されていました。FO推進部が一丸となって設定した新ルートが使われていることを身をもって体験した時間でした。
空の道である“フライトルート”は、私たちANAグループの安全運航を支える基盤。
安全で快適な空の旅を通してANAグループのあんしんを感じていただけるよう、最新の航空情報、機体の性能、そして国際的な規則を網羅した緻密なルートを日夜設計し、検証し続けていきます。
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