安全と品質に迫る!ANAとボーイング社のパートナーシップ
ANAの翼としてボーイングの飛行機が日本の空を飛び始めてから、70年近く。ボーイング社は、アメリカが世界に誇る航空機メーカーであり、その飽くなき安全と品質への探求心は、航空業界のグローバルスタンダードを築き続けています。
今回は、アメリカ・シアトルにあるレントン工場を訪問し、ボーイング社の皆さんに安全と品質の未来に向けた熱い想いをお聞きしました。

レントン工場で見た、ボーイング社が挑む安全・品質計画のリアル
近年、航空業界はコロナ禍からの急激な需要回復や世代交代など、大きな変化の中にありました。ボーイング社では過去2年半にわたり、現場の声に真摯に向き合い、徹底的に課題を洗い出し、以下の4つの点についての改革を推進しています。
1. トレーニング体制の強化
新入社員の増加に合わせ、配属前のシミュレーション訓練や熟練者によるサポートを大幅に強化。誰もがプロとして活躍できる育成環境を整えています。
2. 作業プロセスのシンプル化
複雑だった作業指示書をデジタル化。内容を理解・実践しやすく改良し、現場を離れず手元で仕様を確認できるようにし、作業員が目の前の機体に100%集中できる環境を作りました。
3. 社内外の品質管理体制の刷新
自社工場ではコンプライアンス指標と品質管理システム(QMS)・安全管理システム(SMS)の連動により、不適合発生時に自動で安全レビューが走る仕組みを構築しました。
サプライヤー側にはリスク予測ツールを導入した他、専用の検査員を配置し、監視体制を強化しました。
4. 安全・品質文化の底上げ
現場の誰もが、懸念や気づきをためらわずに発言・共有できる風通しの良い組織づくりを推進。「Speak Up(声を上げること)」を定着させ、全員で安全を創り出す高い意識が根づいています。

「これら一連の取り組みは、単にFAA(連邦航空局)への約束を果たすための一時的なものではありません。最も重視しているのは、ボーイングの運営方法を根本から持続的に変革することです。特に予定された作業が完了していない、または安全基準を満たしていない場合には、次の工程に進めることを厳格に禁止しています。作業員や機体の安全にリスクがある場合は、そのリスクが解消されるまで、機体を同じ位置に止めます。このように製造へのアプローチを刷新したことで、『いま、どの作業を 安全第一で完了すべきか』という意識が現場に深く定着しました。FAAの基準をクリアした後も、従業員や管理職への教育をさらに強化させており、長期的な視点でこの安全文化の定着を図っています。」

現場の作業員が気づいた小さな違和感や改善アイデアを即座に見える化
「セーフティ・ドージョー(安全道場)」とは?
工場で働く従業員の安全、品質、効率性の向上のため、現場のアイデアを実際の工具として開発・検証する場所です。その名の通り、日本語の「道場」に由来しており、2022年にオープンしてから「学びや共有のための場」となっています。
従業員が直接立ち寄り、「今日の作業で身体のどこが痛むか」「何が不便か」を専門スタッフと対話し、スタッフは怪我のリスクを減らしたり、作業時間を大幅に短縮する工具のアイデアを即座に形にして、検証を重ねます。単なるコスト削減や効率化ではなく、「従業員の身体を守り、長く健康に働けるようにする」ことを最優先に掲げています。
ただ工場の安全を守るだけでなく、「従業員の家族の幸せや生活も守る」という強い使命感を持ったスタッフが一つの工具に対して、繰り返し「作っては直し、試しては改良する」エピソードはまさに技術の修練を行う「道場」であり、「セーフティ・ファースト」の精神を体現する場所です。

セーフティ・スペシャリスト Andrew Edwardsさん、
シニアマネージャー Alice Hoさん、
マネージャー Neal Winterさん


簡単に移動ができる機械

(Andrewさん)
「私が新入社員によく伝えるのは、不平を言うのは簡単だということです。しかし、私が求めていることは、そのマインドセットを変え、物事を違った角度から考えることです。今日の作業の中で自分の身体を痛める可能性があるものを見極めて、一緒に解決策を考えましょうと話をします。最も重要なのは、あなた自身が『変化を起こす能力』を持っているということです。」

新機材ボーイング737-8について
200万点以上の部品からなるボーイング737(以下、B737)の機体は、レントン工場で最終組立を経て完成します。組立はカンザス州ウイチタ工場で製造される胴体の搬入から始まり、完成後に検査、塗装、引渡しへと進みます。4本の最終組立ラインが24時間体制で稼働しています。
近い将来、ANAが受領するB737-8の特徴を伺いました。

「B737-8には、ボーイング787(以下、B787)の革新された多くのテクノロジーを適用しました。キャビン空間を設計する際に、搭乗する人々を常に中心に置いて考えるとともに、空を飛ぶ魅力、その素晴らしさを称えたいと考えています。これがキャビン設計における私たちの基本理念です。」
●操縦室
操縦席の前には、B787と同じ約38センチの大きなモニターが横に4つも並んでいます。広い空港の地面を走るとき、ノートパソコンほどの画面いっぱいに「空港のデジタルマップ」が映し出されます。カーナビのように「次にどこを曲がればいいか」がわかりやすく表示されるため、複雑な空港でも迷うことなく、安全に滑走路まで移動できます。
パイロットの視界に広がる「ヘッドアップ・ディスプレイ(HUD)」には速度や高度といったクリティカルな航法データが投射されます。
視線を前方から外すことなく瞬時に状況を把握できるため、パイロットの本質的な任務である「操縦(Aviate)、航法(Navigate)、通信(Communicate)」のパフォーマンスを極限まで高めます。
●ウイングレット
主翼の端に装備された、上下に分岐する最新鋭のアドバンスト・テクノロジー・ウイングレット。
空力特性を最適化して空気抵抗を大幅に削減し、揚力を増加させます。これにより、優れた燃費性能と環境負荷の低減を実現させています。
●エンジン
カウル後端に刻まれた特徴的なシェブロン(ギザギザ)形状が特徴的。
排出される空気の流れをなめらかにコントロールすることで、機外の騒音を大幅に抑え込む最新の遮音テクノロジーで、B787にも採用されています。

機体は夜間にクレーンで吊り上げるか床面上で動かして次のポジションへ移動する
ともに安全を作る「最高のパートナーシップ」
~ボーイング社から見たANA~
安全性と品質において、ボーイング社とANAは緊密に協力し合ってきました。ボーイング社の技術者が羽田空港(ANAの整備拠点)に、ANAの技術者がシアトルに常駐し、お互いの視点から品質管理において深くコミットしています。そして、航空機の引き渡しに向けて一丸となって連携しています。

「ANAは、まさに特別な存在と言えるパートナーです。多くのエンジニアがシアトルに駐在し、航空機の引き渡しを数ヶ月後に控えた段階から私たちに合流します。そして、プロセスを深く理解した上で、より優れた製品を生み出すための鋭い質問を投げかけ、私たちを後押ししてくれるのです。ANAと共にこのような経験ができるのは光栄なことです。シアトルに駐在しているANAのスタッフが作成した「You Build It Right, We Fly It Safe(あなたたちが正しく造り、私たちが安全に飛行する)」というスローガンとそれが書かれたステッカーも大好きです。」

「You Build It Right, We Fly It Safe(あなたたちが正しく造り、私たちが安全に飛行する)」
ものづくりの誇りを持ったボーイング社の「造り手」と、安全な運航に責任を持つANAの「担い手」。お互いがリスペクトの精神を持ち、時には厳しい議論を交わしながらも、目指すゴールはただ一つ、「絶対の安全」です。
ANAはこれからもボーイング社との強固なパートナーシップのもと、世界最高水準の安全性と品質を守り抜き、お客様に安心で快適な空の旅を提供し続けてまいります。