<後編>「私たちはなぜここにいるのか」
デジタル全盛時代に、あえて「人」の価値を問い直した
コンテスト事務局の挑戦

2026 / 02 / 27
サービス・商品

2025年12月に開催した「第18回 空港カスタマーサービススキルコンテスト」の熱い戦いの裏側には、半年以上にわたり「これからの空港係員の在り方」を議論し続け、悩み抜いた事務局メンバーたちの姿がありました。

<前編記事はこちらから>
デジタル時代のサービスを考える~グランドスタッフ 新たな挑戦~<前編>
https://www.anahd.co.jp/ana_news/2025/12/26/20251226-1.html

後編では、約8,000名の旅客係員の頂点を決めるコンテストの企画・運営を担ったANA オペレーションサポートセンター空港サポート室旅客サービス部(以下、OSC)のメンバーへのインタビューを通じ、大きく舵を切ったコンテストの背景と、そこに込められた想いに迫ります。

ANA オペレーションサポートセンター OSC空港サポート室旅客サービス部
(左から)浜 亜佳音さん、安住 悠さん、杜 恵婉さん、村石 智子さん、山田 健介さん

2030年への飛躍―「進化」への挑戦

今回のコンテストは、「変わらなければならない」という強い使命感のもとで動き出しました。

「これまではいわゆる“おもてなし”の要素が強く評価される傾向にありました。しかし、これからの時代はもっと本質的な『スキル』や『思考力』にもフォーカスを当てるべきだと考えました」(安住)

「社会の変化のなかで、空港の係員に求められる姿も大きく変わっています。2030年の絵姿を描く中で、これまでの『接遇力』に重きを置いたコンテストでは、理想とする係員を育んでいくことが難しいと考え、コンテストの刷新をおこないました。『変わらなければいけない』というメッセージを、今迄と変わらない伝え方や変わらないコンテストをもってしては、私たちが本当に届けたい想いは、現場の皆さんに伝わりきらないと思ったんです」(山田)

事務局メンバーの多くが2025年4月に着任したばかり。過去の慣例にとらわれず、「ゼロベース」で議論できたことが、改革の推進力となりました。

「1対1」の理想と、「1対多」に向き合う現実

今年度のコンテストでは、従来のような、お客様一人に丁寧に寄り添う場面だけでなく、複数のお客様への同時対応や、イレギュラー時のハンドリングなど、より「リアル」な状況設定がなされました。

「かつてはカウンターで実施していたお手続きは、今や自動チェックイン機やセルフサービスで実施していただくのが基本となりましたが、何らかの事情でお手続きが出来ないことやイレギュラーに見舞われることもあります。そのようなときに係員がどうフォローするかが問われる時代です。だからこそ、ただ丁寧なだけでなく、一人で多くのお客様を適切に応対する力や、瞬時の判断力が不可欠になっています」(安住)

海外空港での経験を持つメンバーも、この変化に強く共感します。

「海外の空港では、イレギュラー運航が発生した際、3~4名のスタッフで200名近いお客様の対応をしなければならないこともあります。これまでのコンテストのような『1対1の丁寧な接客』は、もちろん理想であり目指すべき姿です。しかし、リアルな現場では目の前の『多くのお客様』に対応し、その中でどうベストを尽くすかが問われます。今回のグランプリ受賞者(フランクフルト空港・Baykut Buseさん)の対応事例は、今後の現場対応の参考になるはずです」(杜)

2025年12月1日に実施されたコンテストでBuseさんが対応している様子

変える勇気、残す信念。「ブランドは人なり」

コンテスト改革にあたり、事務局は「私たちはなぜここにいるのか ~デジタル時代のサービスを考える〜」というテーマを設定しました。

「テーマ選定で軸にしたのは、与えられた設定の中で、おもてなしを表現するだけではなく、正解のない問いに対して係員自身が考え、表現する場にするということです。日々アンテナを張ってお客様と接している皆様だからこそ感じる『これからの時代に必要なこと』をあらためて考えてほしい。だからこそ今回は、指示を出すのではなく『皆さんの想いを表現してほしい、私たちに未来のヒントをください』という、現場への信頼と期待を込めました」(村石)

一方で、どんな時代でも「変えてはいけないもの」があることにも気づかされたと言います。

「『どう一新するか』という点を中心とした議論が進む中、井上社長からの『変えちゃいけないものもあるよね』という言葉にハッとしました。何度も議論を重ねる中で再確認したのは、『ブランドは人なり』という信念です。デジタル化が進むからこそ、人にしか出せない温かみや価値は絶対に残していかなければならない。それをどうコンテストでの審査内容に表現するか。そのバランスには最後まで試行錯誤しました」(村石・安住)

「ファイナリストへの記念品も、これまでの日用品から、あえて業務で使用するiPad用ストラップに変更しました。そこには『プロフェッショナルとしての誇りを身につけてほしい』という願いが込められています 。」(浜)

会議中の様子
出場者12名贈呈された
「Finalist 2025」のロゴが入った記念品

答えは本番にあった

事務局の想いや意図を、各空港係員がどう解釈し表現してくれるのか。迎えた本番。ファイナリストたちの姿は、事務局の不安を払拭するものでした。

「グランプリに輝いたフランクフルト空港のBuseさんをはじめ、多くの出場者が『デジタルにはできない、人間にしかできない寄り添い』を体現してくれました。私たちが意図した以上に、各空港の皆さんは『自分たちの役割』を深く理解し、表現してくれたと感じています」(山田)

「従来の『理想的な接客』から、『現実に即した対応』へとハードルを上げましたが、出場者は必死に食らいついてくれました。その姿を見て、変化を恐れない強さを感じました」(村石)

事務局が見据える「これからの空港係員」

コンテストを終え、事務局メンバーは改めて「変化」の必要性を感じています。

「今までのやり方を守ることは得意でも、そこから何が必要で、何を変えていくかを考える力をもっと養っていく必要があると感じています。今回のコンテストが、8,000名の係員全員にとって『自分たちの価値』を再定義するきっかけになれば嬉しいです」(村石)

時代が変われば、求められるスキルも変わる。しかし、「お客様に安心と歓びを届ける」というANAグループのDNAは変わらない。 OSCの挑戦は、まだ始まったばかりです。

ANAグループでは、これからも便利さと温かさを両立させ、世界中のお客様に「安心」と「新しい価値」を提供できるよう、カスタマーサービススキルの発揮につとめていきます。