リチウムイオンバッテリー火災から
お客様、乗務員、航空機を守る。~客室乗務員としての経験、想いが生んだ
Fire Resistant Bag 開発の裏側~

2025 / 04 / 11
あんしん・安全・衛生

近年、電子機器内蔵のリチウムイオンバッテリーの経年劣化や品質不良などで、火災につながる発火や発煙が国際的に報告されています。ANAでは、機内において、異常発熱や変形を伴うリチウムイオンバッテリー火災のリスクを最小限に留めることを目的に、菊地シート工業株式会社・TOPPAN株式会社とともに、Fire Resistant Bagを開発。
2024年4月よりANA機材に搭載し、2025年1月より販売もしています。

異常発熱した電子機器を一時的に安全に退避させ、発火や破裂などのリスクから
乗客や乗務員、航空機を守る「Fire Resistant Bag」

今回は開発に携わった、ANA オペレーションサポートセンター(以下OSC) フライトオペレーション推進部(以下FO推進部) 客室基準チームの山西さん、川原さんにお話をお聞きしました。

<開発担当者>

ANA オペレーションサポートセンター
FO推進部 客室基準チーム

川原 有季さん
2012年 ANA客室センター客室乗務部に入社、国内線、国際線に乗務。
2021年に国際線のチーフパーサー資格を取得し、後輩育成にも尽力。
2024年4月より、OSC FO推進部 客室基準チームに異動、客室乗務員のマニュアル作成に携わる。

山西 優貴さん
2014年 ANAウイングス入社。
伊丹空港を拠点として国内線の小型機(B737、DHC8-400)に乗務。
2022年4月よりANAウイングス兼務で現部署に異動。
客室乗務員のマニュアル作成に携わり、主な担当は機内医療やB737MAX導入など。

Q ”地上の客室乗務員?’’ 客室基準チームの仕事とは

川原さん
客室基準チームは、客室乗務員として乗務経験があるメンバーで構成されています。7名の小さな組織ですが、業務内容は、客室乗務員の保安・安全にかかわることはほとんど全て、と言っていいほど幅広い分野を担当しています。
新しく取り入れた施策が現場で問題なく運用されているか、課題はないか、乗務しながら自身の目で確かめることもしています。

山西さん
ANAグループ客室部門の安全業務にかかわる調整やマニュアルの作成・管理を行っています。現場で迷いなく確実に業務を遂行できるマニュアルの策定を目指して、チームで日々議論しています。客室乗務員経験を活かし、機内という特殊環境ではどう考える?どう動く?とイメージするなど現場目線で考えられることが私達の強みです。

Q Fire Resistant Bagのこだわり

軽量かつコンパクト、安全性の高い収納袋へと価値を高めたことです。
大小様々なANA機材(ANA・Air Japan・ANAウイングス運航機材全て)に搭載する上で、スペースがかさばらず、搭載重量負荷を最大限小さくすることでコストカットにもつながりました。
また、異常発熱や変形に早い段階で対処し、耐熱性を備えた袋内で保管できるアイテムとして、TOPPAN社が開発した消火フィルム「FSfilm®」と菊地シート社が提供する「耐火袋」を独自に組み合わせ、保管袋内で万が一発火した場合も火力を瞬時に衰えさせることができる仕様としました。

Q 客室乗務員としての経験から生まれたアイデアや
「現場で大きな効果を発揮している」と実感したポイントは?

迅速な対応が求められる状況下において、「客室乗務員が迷うことなく、簡単に扱うことができる」ことをポイントに使用手順を定めました。自身が機内で使用する状況をイメージしながら、使用方法の理解促進に向けたe-Learningと動画も作成し、ANAグループ全客室乗務員を対象とした導入前教育にも力を入れました。

実際に乗務する以外では、客室乗務員の提出するレポートから現場の声を収集しています。発熱が生じた電子機器を、Fire Resistant Bagの中で安全に収納することでお客様に到着地で返却できていることなど、導入後の使用事例を目にすると、オペレーションへの影響を回避することに貢献できていることを実感します。世界では、リチウムイオンバッテリーに起因する火災事故も実際に発生しており、決して他人事ではないと感じています。これまでのリチウムイオンバッテリー火災に対する客室乗務員の訓練に加えて、運航の安全やオペレーションの維持に貢献できると考えています。

Q Fire Resistant Bagをはじめ
新しい施策導入の苦労とやりがいを教えてください

新しい施策を進める際には、国際規格や航空局の通達、他航空会社の状況などの準拠を慎重に調査・確認します。特殊な環境で迷いなく確実に行動できるか、ANAのオペレーションの実態に即した手順か、様々な視点での検討は簡単なことではないですが、ANAグループの客室乗務員が自分の調整した安全業務に則り乗務することを思うと、大きな責任とやりがいを感じます。

Q その道のプロが集結!? FO推進部の魅力とは?

FO推進部は6つのチームに分かれ、客室乗務員や運航乗務員はもちろんのこと、整備士や運航技術、運航支援者など、各オペレーションの専門知識を持ったメンバーが多数所属しています。それぞれの分野に精通した仲間が部内にいることは、スピーディーな課題解決につながっています。他部門のマニュアルや運用に関することでわからないことがある際には、すぐに聞きに行けることもFO推進部ならではの魅力です。

Q これからの目標を教えてください

2025年1月、ANAグループ行動指針である「ANA's Way」に基づき、企業文化の強化や、「付加価値創造」に貢献した取り組みを表彰する社内コンテスト「ANA's Way AWARDS 2024 授賞式※」においてSafety Awardを授賞し、ANAブランド向上に貢献できたことがチームの自信につながりました。安全に関するマニュアルや運用を変えるためには、過去の経緯や関連する法律・通達の調査、他部門との調整など多くのステップを積み重ねていく必要があります。今後もANAグループの現場で働く客室乗務員が安全を堅持できるマニュアル作成を目指し、「安全が全て」という思いを持って課題に真摯に取り組んでいきます。

ANA's Way AWARDS 2024 授賞式ではSafety Awardに加え
社員投票最多事例に贈られるA-1グランプリも同時受賞
ANA OSC FO推進部
客室基準チーム
左から、平賀 一代さん、山西 優貴さん、ANA 井上 慎一社長、今重 佳世子さん

※ANA's Way AWARDSとは
ANAグループの行動指針「ANA'sWay」に基づき行動し、価値創造やブランド力の向上に貢献した取り組みを選定基準に則って選出。グループの強みである「人の力」と「チームワーク」を発揮し新たな価値を創出した事例を表彰し、社内に広く周知することで、経営ビジョンの実現に向けた一人ひとりの行動化を促します。

詳細はこちらから
https://www.anahd.co.jp/ana_news/2025/02/18/20250218.html

FO推 客室基準チームのみなさん

ANAグループは安全を最優先に日々の運航を堅持し、今後も最新技術を活用した取り組みを推進することで航空業界の安全品質向上に貢献していきます。

※この記事は2025年1月の取材に基づく内容となります。

【プレスリリースはこちらから】
https://www.anahd.co.jp/group/pr/202411/20241129-4.html