ANAの運航乗務員を支える「当直」の仕事に迫る
ANAには約2,000名強の運航乗務員が所属し、24時間365日、世界中の空で大切なお客様にご利用いただいています。日々の運航ではスケジュール遵守に努める一方、荒天事由などで止むを得ずイレギュラーも発生します。日々の運航を支えるために、裏では多くの社員の努力があります。今回は、当日に発生する様々な運航便のスケジュール変更に対応する「当直」と呼ばれる業務の担当者3名にお話を伺いました。
<お話を伺った人>
ANA フライトオペレーションセンター(FOC)
業務推進部 乗務サポートチーム
・徳田 周五(とくだ しゅうご)さん
2024年2月にグローバルスタッフ職として中途入社。前職の鉄道会社では10年間勤務し、海外向けのプロモーションやマーケティングを担当。3月からFOCに所属し、当直業務を担当。
・大友 元(おおとも はじめ)さん
1989年に入社。客室センター・FOC・オペレーションマネジメントセンター(OMC)、エアージャパン、ANAウイングスなど25年以上ANAグループの運航を支えてきた。現在はFOCに所属し、管理職として当直業務を担当。
・林 円香(はやし まどか)さん
2019年に客室乗務職として新卒入社。国内線・国際線に5年間乗務。2024年4月から職掌転換してグローバルスタッフ職になり、FOCに所属し、当直業務を担当。
Q. 当直とはどんな仕事ですか?
大友さん
運航乗務員の当日や翌日の勤務をそれぞれの規程やルールに合わせて調整する仕事です。運航乗務員の勤務時間の制限、機種資格、空港の資格、天候の条件などを満たしているか、さらには資格維持・訓練審査にも配慮しながら細かな調整をしています。
徳田さん
私たちとは別に、「スケジューラー*1」と呼ばれる担当者もいます。スケジューラーは翌月や中長期のスケジュールを作成しますが、私たちは当日から翌日にかけての「直近の運航便の維持」「機材変更」「病欠でクルー不在」などに対応し、他のクルーに乗務を依頼して定時運航を維持し、全体の勤務管理を行っています。
大友さん
全ての規程やルールに沿って、お客様の利便性やOMC*2の運航方針を踏まえながら「全便に最適な運航乗務員を割り振る」ことが業務となります。また、当日といっても深夜便もあるため、「始発から始発まで」、365日24時間きっちり便を出すことが我々の仕事です。もちろん何もなければスケジュール通りですが、毎日何かしらのイレギュラーが発生します。
Q. これが当直業務のコツです!というものがあれば教えてください。
徳田さん
目の前で起きたイレギュラーに対して、その先の影響やリスクを先読みして対応を考えることがコツだと思います。また、天候、機材、運航乗務員に関して幅広い知識が必要です。そのため、いかに「知ろう」と思って向き合えるかが大事だと思います。日々吸収しながら少しでも成長できるよう、心掛けることを大切にしています。
大友さん
新しい目で見ることが大切だと思います。日々状況は異なるので、勤務や訓練パターン、機材、お客様の人数、天候、航空路の混雑など、様々な組み合わせで考えなければなりません。知ったかぶりで「これだろう」と思い込むのは禁物です。
林さん
実際に当直業務に携わってはじめて、日々の業務には様々な要因が関わっていることを知りました。自分が客室センターに所属していた時に急遽スタンバイでフライトに変更になった気持ちが今ではよく分かります。「この時間に言われたら大変だろうな」などと感じることもあります。両方の経験があるからこそ、迷う時もありますが、そのような目線は大切にしています。
Q. 当直業務におけるやりがいはなんですか?
林さん
飛行機は飛んでいるのが当たり前と思われがちですが、実際には裏で多くの大変な調整が行われていることがよくわかりました。客室乗務員の時は、あまり気にせず業務に従事していたのが正直なところです。毎日予定通り運航することにとてもやりがいを感じます。
徳田さん
前職を踏まえても、オペレーションの仕事に携わるのは初めてでした。様々な部署がある中で、約2,000名の運航乗務員の労務管理に携わることができて、責任を強く感じられる職場だと思います。私のようなキャリア採用や新入社員は、大変な部分もありますが、会社の根幹である「人」と「運航」に関わることができるので、航空会社の最前線を経験できる職場としておすすめです。
大友さん
天候や機材変更、乗務員の交替など色々なことが起きても、お客様の便は平常運航して、「予定通り」をお約束できることにやりがいを感じています。ものすごく疲れますけどね(笑)。例えば、台風の翌日を平常運航にすることは大変です。その裏側では、当直スタッフによるスケジュールの調整や、当日の臨機応変なスケジュール変更に柔軟に対応する力量のある運航乗務員がいるからこそであり、社員の総力で成り立っています。
Q. 乗務サポートチームならではの自慢はありますか?
林さん
どんなイレギュラーでも、即興でとにかく対応できちゃいます!チームですぐに物事を形にできると思います(笑)。それができるのは、天気やオペレーションに詳しいメンバー、そして地上研修中のパイロット訓練生もたくさんいて、色々な人がいるからこそだと感じています。日々、多角的な意見が飛び交っていて、面白いチームです。
大友さん
人間関係がフランクですね。起きている事象に対して「こうなんじゃないか」とみんなで対等に議論します。「こっちにしません?」「それいいね!」というやり取りが頻繁にあります。ANAグループには4万人以上の社員がいて、いろんな仕事があり、最後にはお客様がいらっしゃいます。私たちが最後に上手く調整しないと飛行機は飛びません。予定通り飛ばせた時に、お客様との約束を守りきれたとチームで感じられることが自慢ですね。
Q. 他部署や運航乗務員とのやり取りで、嬉しかったエピソードがあれば教えてください
徳田さん
もちろん大変な場面も多いですが、多くの命を預かって乗務している運航乗務員から「ありがとう」と言われた時はとても嬉しいです。小さなことでも、運航のために自分も役に立てたなと思います。
林さん
不規則な勤務に対して柔軟に対応してくれる運航乗務員にはいつも感謝しています。サポートした際に、それを覚えており、わざわざデスクまで来て「この前はありがとう」と言われた時は嬉しかったです。些細なことでも相互にコミュニケーションを取ることは大切だと感じています。
Q. 今後の展望を教えてください。
徳田さん
ANAは世界を代表するエアラインであり、事業を通して日本や地域の魅力を国内外に発信し、旅のきっかけをつくることができる会社です。この会社の一員として、前職での経験と現在の業務を踏まえ、自分のやりたいことや強みを大事にしながら、任された業務を通じて社会や会社にどう貢献できるかを大切にして、様々なことにチャレンジしていきたいです。
林さん
客室乗務員の時はお客様と接する最前線で働き、ANAに対して熱い想いを持ってくださる多くのお客様に支えられていることを肌で感じていました。今は直接お客様と関わることは少ないですが、日々の運航を通してお客様にご利用していただいていることを実感しています。この部署では、学ぶことが本当に多く、グローバルスタッフ職として最初にこの部署に来てよかったと思っています。これからも、いろんな現場や部署からANAのファンをもっと広げていきたいです。
大友さん
「強いオペレーション」を構築することですね。事業規模が拡大し、世界が高度化していく中で、5年後、10年後も十分対応できる体制が求められます。限られた時間の中で、オペレーションに強い組織をつくるためには、若い世代に私の10年分の経験を1年で伝えていかねばならないと感じていますし、少しずつでも、オペレーションに強い人財を育て続けていきたいと思います。多くの若い世代に集まっていただき、みんなで強いオペレーションを具現化していければと思います。
*1 スケジューラー
⇒LIVE ANA Group 「運航乗務員を支える「スケジューラー」の仕事に迫る」
https://www.anahd.co.jp/ana_news/2024/02/26/20240226.html
*2 OMC
⇒ANAブランド全運航便の運航管理・ダイヤ管理を行う「ANAオペレーションマネジメントセンター」