本邦初!次世代型バイオ燃料!
~リニューアブルディーゼル(RD)のGSEへの実証を開始しました~
ANAは、2024年5月9日より、日本で初めて航空機地上支援器材*¹(以下、「GSE」)の代替燃料として期待されるリニューアブルディーゼル*²(以下、「RD」)の利用に関わる実証を開始しました。
ANAグループは、中期環境目標として、2030年までに航空機の運航以外で発生するCO2を2019年度比で33%削減することを目指しています。現在、GSEの燃料は軽油(ディーゼル)が主で、全てのGSEをすぐに電動化することは技術的に難しいという課題があります。RDは、既存の車両や給油施設をそのまま活用することが可能な「ドロップイン」燃料であり、軽油の代替燃料としてCO2削減に有効と期待されています。
今回の利用実証を通じて、RDの安定供給における課題を検証し、空港オペレーションでの脱炭素化の選択肢の一つとして、将来の本格導入に向けた準備を進めています。
RDの導入に携わった2名の社員にお話を伺いました!
<お話を伺った方>
ANAエアポートサービス 総務部 総務課
大久保 和祐(おおくぼ かずまさ)さん
・2013年に入社。国際線を中心にランプサービス業務に4年半従事。4年前にANAオペレーションサポートセンター(前田さんの部署)に出向し、GSE全般の管理および地上分野の脱炭素を担当。今年度より現部署に配属され、空港の施設業務を担当。
ANAオペレーションサポートセンター
空港サポート室 グランドハンドリング企画部
前田 利幸(まえだ としゆき)さん
・1998年にANA関西空港株式会社に入社。機側にて国際貨物搬送、航空機への搭降載を担当。その後に様々な部署を経験し、2年前より現部署に出向し、空港のGSE全般の管理を担当。今年の4月から地上分野の脱炭素を担当。
(写真/大久保さん)
Q. RDのご担当になった際のお気持ちを聞かせてください!
未経験の領域のため、不安はありました(笑)。当時の部署に着任した際、最初は担当ではなかったので、「すごいことに着手しているな」と思っていただけでしたが、まさか翌年度に自分が担当になるとは思ってもいませんでした。
Q.どんな背景を経て、RDをスタートしたのでしょうか?
実は脱炭素を推進する上で、先にEVやFCV*³の導入を検討していました。しかし、空港内の充電設備が未整備であったり、羽田空港のような基幹空港では停電をはじめとする非常時の対策など、多くの課題がありました。そのため、すぐにEVを導入することは難しく、代替燃料の活用も検討し始めました。EVにとらわれず「脱炭素の選択肢を増やしていく」ことに重点を置き、RDやその他の選択肢を組み合わせたベストミックスを見つけながら、並行して進めていこうという結論にいたりました。
Q.そんな経緯があったのですね。。。RDを導入するにあたってはどんなところで苦労しましたか?
運用方法です。例えば、どの車に適用するのか、そもそもGSEにRDを使っていいのか、給油はどうするか、など多くの課題に直面しました。その都度、解決策を見つけ出し、他部署の方々との連携のおかげで、何とか実証に辿り着くことができました。皆さんのお力添えなくしては成し得なかったです。
Q.ぜひ今回の実証にいたった想いをお聞かせください!
ようやくここまで来たな、という気持ちです。実証段階ではあるので、今後RDがANAグループの脱炭素化に有効か、価格面も含めて環境目標の達成に貢献できるかどうかを検討していく必要があります。一方で、これまで多くの準備を重ねてきたものがようやく形になりつつあることに、大きな達成感を感じています!
5月にはメデイア向け実証取材を行いました!
(写真/前田さん)
Q.4月から大久保さんの代わりに前田さんが着任されたそうですね。その時のお気持ちを聞かせてください!
まさか自分が担当することになるとは思いませんでした(笑)。ただ、大久保さんがしっかりとレールを敷いてくれていたので、不安はまったくありませんでした。大久保さんのおかげです。
Q.実証取材を行いましたが、前田さんは現場で感じたことはありましたか?
取材当日は多くのメディアの方々が来てくださり、とても驚きました。このプロジェクトが注目されていることを実感しましたし、現場で改めて脱炭素化の重要性を強く感じました。
Q.現時点での進捗状況や課題を教えてください。
現時点では、RDのGSEへの影響は一切確認されていませんが、今後も定期的に点検を継続していきます。実証は2025年3月頃に終了する予定ですので、その結果を踏まえて、EV、RD、その他の選択肢を組み合わせたベストミックスを検討していく予定です。
Q. 最後に前田さんの展望を教えてください!
航空業界だけでなく、他の運輸業界にも広くRDが軽油と同等に扱われるようになって欲しいと思います!日本全体で脱炭素化に向けて、RDの使用が全国的に広がっていくことが理想です。
RD実証取材についてのプレスリリース
https://www.anahd.co.jp/group/pr/202405/20240509.html
*1 航空機地上支援器材:GSE(Ground Support Equipment)
航空機牽引車やパッセンジャーステップ車、航空機の貨物室へコンテナを搭降載するハイリフトローダー車等、航空機の運航に不可欠な特殊車両の総称。大きなエネルギーが必要であり、現在は軽油を燃料とする車両が多い。
*2 リニューアブルディーゼル:RD(Renewable Diesel)
食料と競合しない廃食油や廃動植物油等を原料として生産される次世代バイオ燃料で、性状は石油由来の軽油と同等。現在、日本国内において、RDは「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」、および「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)」上は、バイオ起源の燃料であるためCO2排出の報告対象外。製造から消費までの環境負荷を評価するライフサイクルアセスメントでのCO2排出量は、軽油対比で70-90%削減できるとされている。RDはSAF(Sustainable Aviation Fuel)製造工程で一定数量製造される連産品で、RD普及はSAFのサプライチェーン強化にも繋がる。
*3 燃料電池自動車:FCV(Fuel Cell Vehicle)
燃料電池内で水素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーで、モーターを回して走る自動車です。