国際女性デー2022(シリーズ2 前編)

2022 / 02 / 15
ダイバーシティ&インクルージョン

3月8日は世界中の人が女性の社会的、経済的、文化的、それに政治的な功績を称える国際女性デーです。去年の英語版シリーズに引き続き、ANAでは女性の活躍推進について考えていきます。

近年、国際航空運送協会(IATA)での議論も活発になってきていますが、経営層や技術系部門も含めたダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公正性)とインクルージョン(受容・包摂)推進を図っている航空業界において、ANAグループがジェンダーバランスや女性の地位向上についてどのようなビジョンを持っているのか、ANAホールディングス 執行役員、グループ D&I推進部長/ANA 執行役員、D&I推進部長 種家 純(たねいえ じゅん)に話を聞きました。

Q: 女性の活躍について、ANAグループでの現在の状況を教えてください。

ANAグループは現在、38のグループ会社があります。運航乗務や客室乗務、航空機整備、空港ハンドリングなどの会社や部門に加え、本社機能やマーケティング・営業組織などの人財がその高い専門性を基盤に連携しながら事業を支えています。性別に関係なく多様なメンバーが能力を発揮していて、女性の活躍領域もとても広い企業グループだと思います。

社員は専門性を深化するだけではなく、自分が描くキャリアプランに応じた働き方の選択肢があり、例えば客室乗務職からグローバルスタッフ職(総合職)への転換など、キャリアチャレンジが可能な人事制度とともに、育児や介護との両立といった「多様な働き方」を支えるサポート制度も整っています。

2021年IATAダイバーシティ&インクルージョン・
チーム表彰式でのスピーチの様子

一方、女性の活躍については、2つの課題があると考えています。1つ目は、役員クラスの女性比率が9.7%にとどまっており、企業として「意思決定の場における多様性」がまだ低いという点です。2つ目は、例えば整備部門や運航乗務職などの技術系の分野における女性社員が少なく、IATAの取り組みと連携して、その割合を増やしていきたいと考えています。

女性に限らず、多様な社員が共に活躍する職場を実現するために、私たちは引き続き人事制度を含めた「一人ひとりが力を発揮できる環境」の整備などを進めて行きたいと考えていますが、アクションにあたっては4つのポイントを重視しています。まず1点目は、D&I推進が経営戦略と連携していることです。2点目は職場とともに進めていくこと。3点目は具体的な目標を可能な限り数字で示し、進捗を可視化すること。最後は社内外に向けた戦略的な発信、コミュニケーションです。

Q: なぜ女性の上級管理職は少ないのでしょうか?

1つには世代的な要因があると思います。男女雇用機会均等法が成立したのが1986年で、その後、社会における女性活躍を目的とした施策が打ち出されました。それでも、結婚や育児と仕事を両立するための環境が十分でない、あるいは日本的な意識や価値観などもあり、離職する人が多く、結果として40代後半や50代では女性管理職比率自体が少ないのが現状です。

世界経済フォーラムが発表した2021年の「ジェンダーギャップ・ランキング」で日本は156カ国中120位でしたが、この背景には「家事や育児は女性がメイン」という考え方が、例えば欧米諸国に比べて日本はまだ強いのではないか、とも言われています。そのような意識は若い年代ではだいぶ変化したと感じますが、上級管理職に女性が少ない一因だと思います。

Q: 意思決定を行う管理職に多様なメンバーがいることはなぜ重要なのでしょうか?

ジェンダーに限らず、クロスカルチャーや障がいを含め、属性、経験や価値観の多様性が意思決定の場にあることは、企業統治や新しい価値創造においても大変重要です。そもそもお客様は多様ですし、マーケットが日々変化している中、提供する価値やサービス、商品などを同質なメンバーだけで決めていくことは競争力の観点でもマイナスです。最近では、組織に多様な視点があることで危機対応能力が高まるとも言われていますが、これも企業にダイバーシティ&インクルージョンが求められる重要な理由だと思います。

Q: 種家さんのANAでのこれまでの歩みについて教えてください。

ANAグループの新たな戦略や改善策を議論する
グループD&I推進部のメンバー

私は1989年にANAに入社しました。当時は3年前に念願の国際線事業に進出したばかりで、社内に海外マーケットのスペシャリストはほとんどいませんでした。「明るく元気なチャレンジャー」としてグローバルマーケットに飛び込んでいく会社の雰囲気が私にとっては大変魅力的で、拡大するANAの国際線事業と一緒に自分も成長したい、と思いながら業務に取り組んでいました。

入社後数年間、国際線の予約や営業などの仕事をした後、新しくできたレベニューマネジメント部に配属になりました。その後、アライアンスやIRの仕事を経て、楽天とANAのジョイントベンチャー旅行会社の社長を3年間務めました。ANAに戻ってからは、デジタルマーケティングや宣伝などを担当しました。

Q: ANAでのキャリアで最も印象に残ったプロジェクトは?

レベニューマネジメント部に配属された際、当初は業務経験のあるインベントリー(座席)管理チームにアサインされたのですが、分析スキルやマーケティング知識を学びたかったため、プライシングチームへの担当替えを希望し、チャレンジの機会を得ました。この時にレベニューマネジメントシステム導入のプロジェクトに関わりましたが、従来の業務フローを大きく変えるプロジェクトということもあり、社内各部署との調整や意識改革にはとても苦労しました。一方で、プライシングや需要予測、予算作成などの定量的な分析手法などを学んだこと、専門分野を持つことができたこと、数字の裏付けをもとに議論や調整をした経験が、その後他の部署で働く際にも大変役に立ちました。

もう1つは、3年間楽天の社内で仕事をしたことです。楽天には年代や経験、国籍など様々なバックグラウンドを持つ社員が集まっていて、ANAとは大きく異なる環境でした。ANAは航空会社ですから、安全なオペレーションが何よりも優先されますが、楽天はEコマースの会社として、如何にスピード感を持ってマーケットに価値提供をしていくかを重視していました。異なる業種の企業文化を知り、外部からANAを見たことは、ANAの強みを再認識するとともに、抱える課題に気づく良いきっかけにもなりました。

Q: ANAの企業文化は変わりましたか?

2021 ANA Diversity & Inclusion Forumでは
モデレーターを務めた

イノベーターとして新しいことに挑戦する文化は変わっていないと思います。日本で最大のエアラインになったことによる変化はあったと思いますが、今も、航空ビジネス以外の新しい事業含め、色々とチャレンジしています。

多様性という意味では、ジェンダーに加えて、世代の課題について意識することも多くなりました。ANAでは職種転換などの機会も増えてきましたが、日々、職場において若い同僚の意見やアイデアが生きているのか。また「ワークライフバランスの観点から男女問わず管理職になることを躊躇する」という社員の話を聞くと、これまでの仕事に対する自分の考えやチームのあり方にとらわれていてはお互いに理解しあえないと感じます。多様なメンバーの価値観を組織のゴールに繋いでいく、ANAグループが持っている強みを、改めて発揮していかなくてはならないと考えています。

Q: 女性役員として、どのようにワークライフバランスをとっているのですか?また未来の女性管理職に向けてメッセージをお願いします。

現在の私の立場では、正直、仕事とプライベートは分けていません。プライベートでも「働き方」や「どういう職場がいいのか?」などを考えることもあります。ANAグループ全体のダイバーシティ&インクルージョン推進を担当しているので、机に向かっている時間だけでなく、社会の変化や他の業界、企業がどのような取り組みをしているか等を幅広く見て、私たちの職場や働き方を変えていくことが大事だと思っています。

気をつけているのは、休みの日に仕事のことを考える時は、ボジティブで生産的なことを中心にしています。このような取り組みをしたらうまくいくのではないか、あるいは、このように伝えることによって、理解してもらえるのではないか等です。反対に、一人でネガティブな振り返りをし始めるとストレスが溜まるので、それはしないようにしています。

ANAグループの未来のリーダーに伝えたいのは、例えば管理職になるというのは単に大きな責任を負うことや人のマネジメントをする、ということだけではないということです。自分の能力を発揮する、あるいは自分が成長することで、組織に貢献できるのは「仕事の醍醐味」ですが、管理職として自分が最良と信じるチーム作りや、仕事をデザインする機会を得られるのは素晴らしい経験です。女性は様々なライフイベントがあり、時間的な制約も対処しなくてはなりませんが、働く年月が数十年に及ぶことを踏まえた上で「どのように仕事と向き合いたいか」「どのようなゴールを目指したいか」を幅広く考え、ぜひ自分の価値を発揮して欲しいと思います。