ANAの客室ができるまで
~B777国際線 開発と改修の舞台裏~
のコンテンツ制作に込めた想い

2021 / 06 / 04

5月からANAの国内線・国際線の個人シートモニターまたは機内Wi-Fiエンターテイメントでご覧いただける番組があります。それはボーイング777-300ERの客室改修作業の様子や関係者のインタビューで構成された50分近くに及ぶ動画です。

普段見ることができない成田空港格納庫での客室改修風景と、デビューまで5年を要した国際線用新シート[THE Suite](ファーストクラス)と[THE Room](ビジネスクラス)の開発に関わったデザイン会社のAcumenの担当者インタビューなど、壮大な内容を組み込んだ番組となっています。

大きな特徴は、客室改修の風景をまとめただけでなく、動画制作の企画から撮影・編集まですべて自らで行った点です。つまりANAグループの手作りの番組。そこで今回は、この動画制作を手掛けた「ANAコンポーネントテクニクス株式会社」の担当者2名にこの番組への想いを聞きました。

ANAコンポーネントテクニクス株式会社(CTC)とは

まずは「ANAコンポーネントテクニクス株式会社」(以下CTC)がANAグループの中でどのような役割を担っているのかご紹介します。

CTCは、ANAグループの運航機材の装備品整備部門として「信頼性の向上」「コストの最適化」「運航支援性の向上」「客室快適性の向上」を追求する会社で、羽田空港の整備地区と長崎県諫早市に事業所があります。
フライト関連計器、電装装備品、客室装備品、無線装備品、空圧装備品、発電機などの整備だけでなく、航空機整備作業に欠かせない計測器の校正業務や機内エンターテイメントをお客様に提供するためのデータ処理と点検作業なども担っています。

今回「ANAの客室ができるまで~B777国際線 開発と改修の舞台裏~」という自社制作番組をCTCが制作したのは、この機内エンターテイメントを担っている担当者に白羽の矢が立ったことが理由です。

「自分たちでできることは自分たちでやり切る」

通常なら海外整備会社へ委託して実施していた客室改修。今回の客室改修は具体的には従来のビジネスクラスシートである「ANA BUSINESS STAGGERED」から[THE Room]も含めた新シートへの改修作業です。

対象機材はボーイング777-300ER型機(機体登録番号JA785A)で、今回新型コロナウイルス感染拡大の影響により成田空港の格納庫で改修作業が行われることになったことを受けて、ANAの商品企画部はこの改修作業をテーマにした番組を自社制作して機内エンターテイメントのコンテンツに加えることを発案し、撮影から編集までの一貫した作業をCTCが担当することになりました。

2020年10月のことです。昨今の事情から機内エンターテインメントの番組数も経費削減のために減らす方針となっていましたが、経費をかけずに魅力的なコンテンツを制作できないかと商品企画部が考え、出した答えがこの自社制作動画でした。

「撮影はやったことがないけれど、どうする?」。CTCの制作部メディアサービス課のリーダー山本さんは依頼を受けたとき、真っ先にこの言葉が浮かんだと振り返ります。「機内エンターテイメントのコンテンツを機種や路線別、月ごとに最適化したデータにしたり撮影してもらった映像データを編集する作業は常日頃から行っていますが、撮影から編集まで一貫して従事したことはなかったのでとても不安でした」。そこでかつて「ANA BUSINESS STAGGERED」シートへの改修風景動画の制作を経験していた長尾さんに声をかけて協力を打診。ここから2人での番組制作のストーリーが始まることになりました。

左から長尾さん、山本さん

「表現したかったのはANAグループのチーム感」

新シートへの改修作業を実際に行うのは、ANAグループのANAベースメンテナンステクニクス株式会社(以下BTC)の整備士たち。BTCは格納庫にドックインした機体の点検や整備を担う航空機整備のプロフェッショナル集団です。

そのBTCの整備士たちと連携を取りながら、およそ100日に及ぶ客室改修の工程の中で、ドックインや「ANA BUSINESS STAGGERED」シートの取り外し作業、[THE Room]シートの開梱、搬入、設置。全シートの電源が入る瞬間、そしてドックアウトなど、要所要所動画のキーポイントとなるシーンにはCTCの山本さんと長尾さんも成田空港の格納庫へ行きカメラをまわしました。

さすがに100日間ずっと撮影し続けることはできないので、BTCの方にも日々の撮影は協力してもらったといいます。そして自ら撮影するときには「スマートフォンや小型動画カメラなどを駆使してできるだけ整備士の方に近づいて撮り、時にはドラマティックに背景をボカして撮りたいので一眼レフカメラでも動画を撮りました」と語るのは長尾さん。

腹這いになって超ローアングルでボルト締め作業などを撮影したりしていたが「一番録りたかったのは音です」と笑います。

整備士同士が打ち合わせをしたり声を掛け合って作業する姿を”生感”のある音とともに記録し続けました。そして膨大な容量の動画を変換、字幕や音入れなどの編集を経て50分近くに及ぶ動画が完成しました。

中でもオープニングで使用している音楽にも強くこだわり、イメージに合うような音楽との出逢いを求めてひたすら探し続けたといいます。

「今回の番組制作を通じて、ANAグループって、いいなと実感しました」。不安を抱えながらも動画制作し終えた山本さんは安堵の表情を浮かべます。そして、この番組を観てくれる人にも「ANAグループの一員として改修に関わった人になった気持ちで、ANAの風土を感じていただければ」と話してくれました。長尾さんは「ANAグループはスマートで洗練されたイメージがあるかと思いますが、意外と泥くさく一つ一つ、誰かがコツコツとやっているんです」。その感覚を見ていただければと語ってくれました。

この番組はANAの国内線・国際線の個人シートモニターもしくは機内Wi-Fiエンターテイメントでご覧頂けますが、6月から国内線の偶数便のメイン番組として30分の短縮版が機内のメインモニターで放映されています。
自社制作番組が国内線のメイン番組になるのは、個人シートモニターなどでお客様が選択してご覧いただくのとは違い、機内の大型画面で放映されるため驚異的な出来事です。ANA便にご搭乗の際にはぜひとも「ANAの客室ができるまで~B777国際線 開発と改修の舞台裏~」をご覧いただき、ANAグループ社員の今回の客室改修に掛けた情熱に想いを馳せていただければ幸いです。