環境と、地球に優しいエアラインを目指す
ANAグループのCO2排出量抑制の取り組み
~Sustainable Aviation Fuelの導入を行っています!~

2021 / 05 / 17
サステナビリティ

ANAグループは、「CO2排出量の抑制」をはじめとした、さまざまな環境負荷の低減に取り組んでいます。
2020年11月6日、日本の空港を出発する定期便として初めてSAF(Sustainable Aviation Fuel)を使用した定期便の運航を実現しました。
そもそもSAFとは何なのか?また、どのようなメンバーで取り組んできたのか。
担当者にSAF導入へ懸けてきた想いを取材しました。

SAF担当者(左から順)
村主さん(調達部)、杉森さん(サステナビリティ推進部)、吉川さん(調達部)、
大石さん(整備センター品質保証室品質企画部)

ANAグループの環境に対する取り組みのひとつである
SAFの導入にいたった背景は?

杉森さん:ICAO(*1) では、2020年以降に温室効果ガス排出量を増加させることなく成長するという野心的な目標を掲げ、単一産業分野として世界初のCO2排出削減スキームCORSIA(*2)を2021年から開始させました。IATA(*3) では、更に2050年時点で排出量を2005年比で半減させる目標を設定しました。

「CO2排出実質ゼロ」

ANAグループは、2020年度にESGにかかわる中長期目標を策定し、2050年までに航空機の運航で発生するCO2排出量を2005年比で50%削減することを目標に掲げて具体的な取り組みを進めてきました。そして、2021年度に入り長期目標を「2050年までに航空機の運航で発生するCO2排出量を実質ゼロとする」としよりチャレンジングな目標に更新しました。
ただし、従来のジェット燃料である化石燃料ではCO2の削減が難しい。
SAFはCO2の排出量が少ない持続可能な供給源から製造されるジェット燃料です。これまでの燃料より地球環境にやさしいということを活かし、さまざまな社内議論を経て導入することを決めました。

SAF導入プロジェクトのメンバー構成やエピソードを教えてください

シカゴLanazTech社ラボ訪問時の現地集合写真

大石さん:杉森さんはサステナビリティ推進部でANAグループにおけるSDGsに関する戦略を検討しています。村主さん、吉川さんはANAグループのエネルギーを調達する部署に所属しています。そして私は燃料の品質管理や関係事業者への監査も行う部署に所属しています。それぞれに得意分野を有するメンバーが「ANAグループとしてCO2削減に対して、あんしん・安全を意識しながら取り組む」という共通の想いがハッキリしていたからこそ、成功につながりました。
そして、嬉しいエピソードとしては、SAFの製造企業から「色々な部署がひとつになって、わざわざ足を運んでくれて感激した」と喜んで頂き、「ANAの熱意を感じる」と言われた事が忘れられません。

吉川さん:今回、各部門から集まったメンバーだったからこそ、SAFを購入・使用するだけに留まらず、製造所から空港への輸送、通常燃料との混合過程、品質保証、飛行機への給油までの一連のノウハウを世界に先駆けて習得できました。実際の航空機運航の実現までを積極的に取り組むエアラインは世界でも希少です。だからこそメーカーとの信頼関係を築くことができましたし、結果的に供給量が限られる貴重なSAFを定期便に使用できるだけの、まとまった量を確保出来ました。

実際の航空機に導入したときの集合写真

そもそもSAFとはどのようなものなのか?

吉川さん:食卓で使用した「天ぷら油」などに代表される「廃食油」、加工肉を作ったあとの脂身部分(いわゆるラード)、植物残渣などに代表されるような、「動植物油脂」といったもの原料としたものです。以前はバイオマスを原料とする事から「バイオ燃料」と呼ばれていましたが、技術進歩により原料の選択肢が拡がり、排ガスなどの非バイオマスからもジェット燃料製造できることから、SAF(Sustainable Aviation Fuel)という呼び名に変わっています。

吉川さん:SAFの原材料は色々ありますが、共通している事は、地表上の炭素をリサイクルしている事です。化石燃料のように地中から地表上に炭素を掘り出さないため、大気中のCO2濃度上昇を抑える効果があり、化石燃料と比較するとCO2排出量が最大90%程度抑制されます。

SAFはあんしん、安全なのか?

大石さん:よく問われるポイントです。フィンランドに本社を置くNESTE社から供給されるSAFは、航空機メーカーやエンジンメーカーが認める国際規格をクリアしています。
今回の調達においては、製造から給油までの各工程における品質管理に重点を置き、徹底的に「安全であること」にこだわりました。
通常においても燃料は、各工程において、次の工程に移るタイミングで検査が行なわれ、品質の証しとなる「成績書」が工程ごとに発行されます。今回は、書類だけの確認とせずに「各品質検査が行なわれる際、確実にクリアするのか」「SAFはあんしんですと、自ら本当にお伝えする事ができるのか」を一つ一つ見極めるために、実際に現地へ出向き自分たちで確認をしました。

一つ一つ入念に確認をする様子

今回の導入にあたり苦労したことは?

大石さん:現地の打ち合わせで、品質に関する「成績書」の調整を事前に行っていました。
世界的にも希少なSAFは大量に製造できないため、一回の出荷量は少量です。
今回、NESTE社のご好意で特別に大量の出荷を約束してくれましたが、数回分の製造が必要となりました。
そのため、実際に出荷された際の「成績書」は多数となり、とても苦労しました。
ちなみに、NESTE社から日本へ移送した船の洗浄記録など細かい部分まで取寄せて確認したことを覚えています。

NESTE社での集合写真
大石さんがテストに関わっている様子

吉川さん:SAFは海外では既に商業使用が始まっていますが、ANAとしては、一番給油量の多い本拠地の国内空港で使えるようにする事がミッションでした。海外の製造企業を開拓し、協力を取り付け、実際に日本へ輸送する実務調整には多くの時間を割きました。また、日本で商業使用されるのは今回が初めてで、空港の給油施設会社など協力頂いた社外の方々にとっても初の試みの連続。最終的に羽田空港・成田空港にタンカー船でSAFが到着する直前まで、安心・安全を担保するために関係各所との調整に駆けずり回り苦労しました。フィンランドのNESTE社にとっても、アジアでの供給したのは初めての経験で、苦楽を共にしたことで絆も深まり、フライトの成功後「NESTEはANAをパートナーに選んで正解だった」と言ってもらえたのは嬉しかったですね。

輸送船が羽田空港に到着した様子

ANAグループが「CO2削減」を通して考えているミライとは?

杉森さん:CO2の削減には、4つの手段があります。「航空機新技術の導入」「運航面の改善」「SAFの使用」「排出権取引」。今回、SAFはひとつの選択肢でした。
ANAグループとして「カーボンオフセットプログラム」などさまざまな取り組みを行っています。しっかりお客様へ届くようなSDGsの活動を積極的におこなっていきたいと思っています。

村主さん:「現在窮乏、将来有望」という言葉が社員の精神には刻まれています。おそらくアフターコロナの世界では、より環境に対する取り組みが重要になっていくだろうと考えていますし、ANAグループがリーディングエアラインになっていく!という目標を持って日々取り組んでいます。

大石さん:お客様へ「あんしん、安全」をご提供するお約束は、SAFを導入しても変わる事はありません。今回、SDGsなどの会社メッセージのプロ、調達のプロ、品質保証のプロが連携することでプロジェクトを実現し成功することができました。
会社のメッセージとして「社会貢献」、調達として「安定的に確実に」仕入れる、品質として「安全である」事を担保する、どれも重要な視点だと理解しています。
引き続き、メンバーが一丸となって「安全であるSAFを安定的に確実に素早く活用し社会貢献に努める」という目標に真摯に取り組むことが、非常に大事だと改めて感じています。

SAFはANAグループにおける「CO2排出量の抑制」の取り組みの柱です。
ANAグループは、未来を見据えながら地球規模で社会に貢献し、共に成長できるエアライングループであるために、グループ一丸となって「夢にあふれる未来への貢献」を着実に実現してまいります。

*1 国際民間航空が安全かつ整然と発達するように、また、国際航空運送業務が機会均等主義に基づいて健全かつ経済的に運営されるように各国の協力を図ることを目的として、1944年に採択された国際民間航空条約(通称シカゴ条約)に基づき設置された国連専門機関です。

*2 Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviationの略称
2016年ICAO総会で採択された、2021年以降CO2排出量の増加を伴わない国際航空の成長スキームです。

*3 国際航空運送協会International Air Transport Associationの略。 1945年ハバナ協定により設立された民間航空会社の団体。 ... 航空輸送の発展のため,運賃,サービス内容,航空技術などの統一を図る。