25年間ありがとう、ドルフィン。
愛された機体がラストフライト。
【前編】

2020 / 08 / 21

1995年の就航以来、「スーパードルフィン」の愛称で親しまれた「ボーイング737-500」型機が、2020年6月14日をもって引退しました。イルカのようにずんぐりと丸みを帯びた愛らしいこの機体は、約25年間、離島を含めた日本全国を飛び回り、多くのお客様に利用していただきました。ANAグループでは、2年以上前からさまざまなイベントを企画していましたが、新型コロナウイルスの影響で次々中止に。25年間の感謝をできる限りの形でも伝えたい、と奔走したスタッフの想い、そして羽田ー福岡便ラストフライトの様子をお届けします。


コロナの影響で、ラストフライトが決まらない…

「この子のラストフライトは、一体いつになるんだろう」。
引退予定の6月末が近づいても運航が決まらず、福岡空港で駐機したままのスーパードルフィンを見るたび、福岡支店総務グループの中島一隆さんは心配せざるを得ませんでした。1994年社会人スタートの中島さんにとって、スーパードルフィンは「ほぼ同期のような存在」。だからこそ、共に頑張ってきた“仲間”と、支えてくださったお客様に25年分の感謝を伝えたいと強く想っていました。

ドルフィンとの思い出メッセージは200通以上

昨年9月に実施した「退役記念ファン感謝祭」も、中島さんたちのそんな感謝の想いが詰まったイベントでした。元々全国を飛んでいたスーパードルフィンですが、就航した当時から福岡を拠点としていたこともあり地元にはファンがたくさん。60人が定員のイベントへの応募総数はなんと2500人。応募フォームの欄外には、
「子どもが生まれて初めて乗った機体でした。今はもうその子も成人しています」
「子どもの頃にジュニアパイロットで乗りました。最近は出張で利用していましたが、もう引退なんですね」
といった思い出がつづられているものが、200通以上もあったそうです。
「追加イベントの希望もあったので、本来ならば一般の方をご招待する『さよならイベント』も実施したかったのですが……」と、中島さんは残念そうに振り返ります。

2019年9月ファン感謝際の様子
ANAウイングス福岡支店の中島さん

できる限りのことをしたい。スタッフは最期まで奔走

5月下旬に入り、ようやく6月14日のラストフライトが決まったものの、一般の方を招いたイベントは開催が難しい状態でした。それでも中島さんたちは、できる限りのことをしたいと、搭乗者だけが参加できるセレモニーとした上で、三密を避けるための方策を徹底的に話し合いました。ソーシャルディスタンスを意識したボランティアの配置や、見送りのスタッフ60人を両翼に間隔を空けて配置することなどを決め、何度も関係各所に説得と調整を続けました。

ファンやスタッフに見守られ、ついにラストフライトへ

6月14日、ラストフライト当日。福岡空港には、ドルフィンの最期の姿を見届けようと、出発の数時間前から熱心なファンの方々が集まっていました。小雨が降りしきる中、駐機場で見送るスタッフは、ドルフィンに力一杯手を振ります。それに応えるように力強く滑走路から飛び立ち、やがて小さく遠ざかっていくドルフィン。スタッフやファンの方々の顔は、雨と涙で濡れていました。

引退から2カ月経った今でも、福岡空港には、ドルフィンへのファンレターや、撮りためた写真が送られてくることがあるそうです。中島さんは言います。

「お客様への感謝しかないです。ベテラン整備さんも『今となっては旧型だけど、安全性の高い、優秀な飛行機だった』と言っていました。だからこそ、全国を飛び回り、お客様の人生に寄り添えたんだと思います。これだけ愛されて退役していく機材はなかなかありません。また他の機材とも、新たな思い出を作っていただけたら嬉しいです」。

ラストフライトを福岡空港でお見送り

次回(後編)は、ラストフライトの機内の様子や、機体に貼られた花束のデカールに秘められたストーリーについてご紹介します!